のせむすびびと vol.9 そば切り蔦屋 能勢で生きることを選んだお蕎麦屋さん
人気そば店が能勢に移転。地元素材を使った新メニューも
名店ひしめく大阪・谷町六丁目で名をはせたそば切り蔦屋が、2016年から能勢町に移転し営業しています。
提携する農家から仕入れる蕎麦は、畑を指定するほど細かく吟味。
仕入れた蕎麦を毎朝磨き、石や汚れを取り除いた後で石臼にかけて自家製粉するこだわりぶりは、移転後も変わりません。
豊かな風味と細麺のつるっとしたのど越しを求めて、谷町時代の常連客が今でも訪れるというのも納得の旨さ。
一番人気は食べ比べが楽しい「そば三種」。
地元の無農薬野菜を使った里山料理や自家製漬物など、移転後にはじめたメニューも人気。
はじめに季節の食材があって、それをどう生かすかを考えています」とオーナー。
能勢の銘酒「秋鹿」をはじめ、日本酒の取り揃えにも力を入れています。
より人間らしいライフスタイルを求めて能勢へ
そば切り蔦屋が能勢町に拠点を移したのは、2011年の東日本大震災とその後に発生した原発事故がきっかけです。
消費と生産がはっきりわかれた社会の脆さを目の当たりにして、便利な都会暮らしに疑問をもつようになりました。
「それまで野菜をつくったことも、薪を燃やして暖をとったこともないし、本当の暗闇も知らなかったんです。震災を機に人間らしい生き方は何かと考えた時、答えは田舎にあるのではないかと思うようになりました」と、自給自足型のライフスタイルが残る能勢町への移住を決意しました。
移住後は都心にはなかった地域活動やお付き合いが多いことに驚いたこともあるそうですが「もともと商売をしようと思ってきたのではなく、『ここで生きよう』というつもりできましたから」と順応し、楽しみながら取り組むように。
地元の若手農家とのつながり生まれたり、公民館から駐車スペースを提供してもらうなど、今ではすっかり能勢町に根付いています。
お店は、日本料理店として使われていた茅葺の民家を改装しました。
縁側から穏やかな日が差し込み、何気なく置かれた古道具や趣のある器も落ち着いた雰囲気を演出してくれます。
喧騒から離れ、ゆったりとした空気の中で里山料理や厳選されたお酒とともにおそばをたぐる。
ここでしか味わえない愉悦の時間をぜひ堪能してください。
※そばはその日必要な分しか製粉しないため、来店する際は予約をおすすめします。








